さめスパゲッティの部屋

2024-07-21 19:07:00

カテゴリ: 本

成瀬は天下を取りにいく

宮島未奈氏の巷で話題の2024年本屋大賞受賞作。
以下ネタバレあり。

舞台は滋賀。この夏、西武大津店がその歴史に幕を閉じることとなった。
中学2年生の島崎みゆきは幼馴染の同級生・成瀬あかりから、こう告げられる。
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
こうして、西武ライオンズのユニホームを着た成瀬は、閉店の日まで西武大津店へ毎日通う夏が始まる。
というようなピーキーな少女・成瀬を主軸にした、一連の6つのストーリーからなる作品。

へたな鉄砲も数うちゃあたるとはいったもので、大口をいくつも叩いといて、1つでも成功すればいいだろう。
というのが、成瀬のスタンス。
結果的に、よくわからないことばかりしているドライな何考えているかよくわからないやつ、といった扱いだがどこ吹く風という様子。
ローカルな、しょーもないことをする物語が好きなので、個人的にはなかなか好きなタイプ。
文も読みやすいため、幅広く楽しめる本だと思う。

あっさりした青春。
部活動だったりチームだったりといった小集団ではなく、自分のやりたいことをやる、ついてきたければついてこい、といった物語がこのようにフィーチャーされるのが最近の世相。
もしくは、人々が「ありたい」と思う姿なのかもしれない。
今作を読んだのはまさに「本屋大賞だから」というミーハーな理由なのだが、他の候補作も読んだら共通項は見つかるのかしらね。

本作は、最後が成瀬視点だったのがよかった。
成瀬をよくわからんが芯の通った面白い人間として終わらせるのではなく、血の通った一人の人間として描いてくれたところにありがたみを感じた。
成瀬にどうあってほしいかによって、ここは人を選ぶかも。
成瀬は成瀬である。変なやつでもなんでもなく成瀬であるというところを見たかったので、うれしかったのかも。
前の記事へ
プロフィール
 no image
 さめスパゲッティ

さめスパゲッティと申します。
なにかをつくったりします。

カテゴリ一覧
月別
最近の記事